世界中の企業が人材開発(L&D)につぎ込んだ金額は、2018年だけでも約3,662億ドルに上ります。ところが悲しいことに、そのような研修の費用対効果(ROI)は支出額に見合うものではないようです。なぜそうなってしまうのでしょうか?

社内研修はなぜうまくいかないのか

社内研修は、単に「あればいい」というものではありません。企業の長期的な投資と成長戦略という視点からは、絶対に欠かせないものです。研修によって従業員は既存のスキルを磨き、新たなスキルを習得し、その結果職場の全体的なパフォーマンスが向上します

ただし現実として、研修の取り組みで成功しているものがあまり見られないのは、突き詰め方が甘いからです。そして、研修が不成功に終わる主な理由が3つあります。

1. 全員が同じ内容を同じ方法で学んでいる

現実を見てみれば、全員に同じ講座を受けさせるやり方で成果が期待できないことは明らかです。 社員全員に、学習による効果を多少なりとも期待するのなら、各自のニーズや役割に合わせた調整を行わない限り、その学習の成果や受講者自身の成長ぶりが分かりにくくなります。 そしてこのことが、長い目で見るとビジネスの成果に影響を及ぼすのです。

解決策
あなたが管理職なら、部下のキャリアを考え、社会人としての成長支援を考えてください。 それぞれのニーズに合ったコーチングと、学習用コンテンツのキュレーション(情報整理)を行いましょう。

2. 研修を実施する最適な時期を逃している

勤務スケジュールの中に研修を組み込むのは簡単ですが、いつも締め切りやタスクに追われ、息つく暇もない多忙な大人は、自分のペースでできなければ学習意欲を保つことが難しくなります。

解決策
「プル型学習」を試す。 学習者が本当に学びたいという強い欲求とニーズを抱えているときが、研修に最適な時期です。

3. 受講率や受講確認テストの成績が実際のスキルに直結していない

従業員の大多数が現行の研修プログラムに参加し、学習に時間を使い、その成績も優秀だと考えている人がいるかもしれません。そうした統計は学習へのエンゲージメントを測るものですが、学習の成功と必ずしも同義ではありません。

解決策
これまでとは違う指標に目を向ける。 スキルの達成度、行動の変化、職場での応用力、自信の獲得。 これらをはじめとする多くのソフトスキルの向上こそが、単なる数字や数値の測定ではなく、学習の成功を測る本当の尺度です。

未来型L&Dを今から始めよう

HR部門のリーダーには、自社の変化と進化にただ対応していく以上の能力が求められています。言い換えると、時間の経過とともに社員に必要なスキルを再取得させ、さらには向上させることを目指した長期的な計画を策定する能力が必要とされているのです。

「組織が将来の戦略を実行できるようになるプログラムやサービスの作成は、人材開発(L&D)の専門家にとって最大のアピールポイントになります。昨今、L&D部門代表者の社内での責任がますます重大になっていることもあり、ハイレベルな働きかけが必要なのです。」 -トレイシー・デュバーマン、学習コンサルタント企業The Leadership Development Group(TLDグループ)代表取締役兼CEO

効果の出るプログラムを作成することが一般的に課題になっていると理解できた今こそ、自社の人材開発の在り方を変えるときです。


出典: HR Executive、Training Industry、Docebo、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)

【インフォグラフィック】人材開発(L&D)リーダーがついやってしまう社内研修の間違い