人材開発(L&D)プログラムにデジタルバッジを導入することで、従業員のアップスキルやリスキルをより充実させ、学習のモチベーションを向上させます。デジタルバッジ活用のベストプラクティスについては、以下の記事をご覧ください。
学習者のエンゲージメントはアップスキルやリスキル、あるいはあらゆる人材開発プログラムにおいて、長年の課題となっています。この課題の解決方法の1つが、学習が継続できるような仕組みを作ることです。学習者が楽しみながら学習するには、研修にデジタルバッジを導入することが最適です。
デジタルバッジとは、学習者がオンライン上でアクセス、表示でき、コースの修了やスキル習得の証明ができるものです。しかし、これはデジタル証明書や認定書などのデジタル・クレデンシャルの一種に過ぎません。また、デジタルバッジをL&Dに導入することは、学習者のエンゲージメントを高める以外にも多くの利点があります。デジタルバッジは、
- 学習者が達成したい目標を視覚化します。
- 学習者に、自分の成果を同僚や他のネットワークに見せられる手段を提供します。
- 学習の結果が可視化されることで学習者がバッジの獲得に向け目標達成のために努力するようになります。
- 共通の学習環境で仲間と比較することで、学習者が自身のパフォーマンスを評価することができます。
しかしながら、どのようなプログラムやプロジェクトでも、その柱となるのは設計と運用です。そこで、アップスキルやリスキルにデジタルバッジを活用する際の、ベストプラクティスをご紹介します。
バッジの利点を学習者に伝える
すべての学習・人材開発プログラムにおいて、常にマーケターのように考えることが重要です。その際に、従業員育成のためのデジタルバッジの利点を強調することが大切です。
研修プログラムを適切に伝えるために、学習者と接点を持つさまざまなプラットフォームがあります。
例えば、Eメール、デジタルポスター、短いプロモーションビデオなどが挙げられます。また、FacebookやLinkedInなどの一般的なソーシャルメディア上で、デジタルバッジを活用した研修プログラムのプロモーションや関連資料を展開することもできます。ブログを運用している場合、そこで宣伝するとよいでしょう。
例えば、学習者の所属する部署に応じてパーソナライズされたメールを送信し、バッジや研修コースによって新たに習得したスキルがどのように評価されるかを伝えることができます。また、自分のスキルセットによって、より多くの人に知ってもらい、自分の可能性を最大限に引き出すことができる、という点を認知してもらうことができます。
バッジの利点を考える際には、学習者のスキルや知識の向上にどのように役立つかを常に念頭に置いてください。以下のセクションで紹介するベストプラクティスは、バッジを取り入れた研修の利点を挙げ、強調するのに役立ちます。
デジタルバッジを取り入れたその先の将来を考える
デジタルバッジを導入した後は、これらの質問に答えることが重要です。
- 学習者の次のステップは何か?
- バッジを手に入れたその先に何があるのか?
- デジタルバッジ活用の最終目標は何か?
これらの質問への答えは、学習者がデジタルバッジの価値を理解し、それがどのように彼らの成長に役立つかを示すものです。学習者の期待値を設定し、次のバッジへとレベルアップする方法を説明しましょう。
また、これらの資格がどのようにキャリアアップやその機会の拡大に役立つのか、あるいはキャリアを変えたいとき、他の役割やプロジェクトを検討するときに、インターナルモビリティを実現するためにどのように役立つのかを考えます。
また、バッジはゲーミフィケーションを取り入れた学習と相性が良いという点も重要です。これにより、学習者は研修の構造をよりよく理解することができます。例えば、「レベルアップ」はゲーミフィケーションのコンセプトの1つです。バッジを取り入れた研修では、学習者に自分がどこに向かっているのか、次に獲得すべきバッジは何か、などの見通しを与えることができます。これにより、学習者は研修の方向性(いつ終わるのか、どうやって次のフェーズ/レベルに進むのかなど)を把握することができます。
このように、研修プログラムを進めていく中で、学習者が次に何を達成すれば次の「レベル」に進めるのか、明確な道筋を作るのです。
バッジをキャリアアップに結びつける
デジタルバッジをより有効に活用するためには、バッジを用いた研修プログラムを学習者の専門的な能力開発に結びつける必要があります。
デジタル・ラーニングの座談会で、Visa社のチーフ・ラーニング・オフィサーであるKarie Willyerd氏は、社員の認定にバッジが不可欠な要素であると語っていました。 その仕組みはこうです。
学習者が「レベルアップ」するためには、一定のポイント(例:100万ポイント)を貯める必要があります。例えば、セールスバッジを取得するためには、まずセールスに関するすべての研修を修了し、それに応じたポイントを貯めて、セールスのデジタルバッジを取得する必要があります。
これが素晴らしいのは、Visaではこのバッジを取り入れた研修プログラムを使って、従業員を人材市場につなげていることです。例えば、学習者が特定のスキルバッジを持っている場合、LXPは学習者が既に持っているバッジの種類に基づいて、そのスキルや知識に適合する可能性のあるさまざまな仕事やプロジェクトの機会を学習者に知らせます。
要するに、デジタルバッジを使うことで、学習者は専門的に成長し、キャリアの視野を広げることができるのです。
学習者がバッジを飾れる場所を提供する
学習のためのデジタルバッジの利点の1つは、学習者がより多くのことを達成し、より多く学ぶのを促すことです。これは、BadgeCert社のビジネス開発担当EVPであるGinger Malin博士の言葉です。
学習者に自分のバッジを表示できる場所を提供するのは、とても良い方法です。例えば、企業のLMSやLXP内のそれぞれのプロフィールにバッジを表示することができます。これにより、特に需要の高いスキルや分野で、自分のスキルや専門知識を誇示することができます。
しかし、バッジが研修プログラムのすべてではありません。アップスキルやリスキルが、仕事の効率化や生産性の向上、より良い職業倫理観につながるということが非常に重要です。
デジタルバッジの成功を測定する
すべての学習プログラムにおいて、研修の設計、運用、研修プログラムのあらゆる側面の効果を評価することは必須です。
測定できる指標の一部をご紹介します。
- 修了者数(必修のプログラムでないものにおいて)
- 研修の各コース/デジタルバッジごとの平均の成績
- 学習者の満足度
- 仕事の改善(業績評価と報告による)
そのためには、主なステークホルダーである学習者自身からのフィードバックを集める必要があります。 インタビューをしたり、グループディスカッションを行ったり、それぞれのマネージャーに話を聞いたりしてみましょう。そうすることで、バッジを活用した研修の評価において、すべてのベースをカバーし、質的・量的な要素を考慮していることが確認できます。
最後に
結局のところ、デジタルバッジは、組織内の学習者のエンゲージメントを高めるためのもう一つの戦術であり、その他の素晴らしいメリットもあります。さらに、学習者のアップスキルや、リスキルの継続を促すこともできます。人材開発(L&D)にバッジを導入する際には、研修コースが学習者の仕事上や個人的の成長にどのように貢献するかを常に考慮する必要があります。